こころをつなぐものづくり【代表インタビュー】
こころをつなぐ ものづくり
私たちの目指すものづくりには、常に「人」が中心にいます。ものづくりを通じてお客様と喜びをわかちあい、ともに成長していきたいという思いは、1991年の創業以来、脈々と受け継がれています。
私たちは、「人と人」のつながり=信頼とは何かを考え、人の喜びにつながるものづくりを追及していきたいと考えています。
そしてさらには、お取引先様や従業員をはじめとした「人」はもちろんのこと、私たちが手がける「モノ・コト」「社会」などとのよりよい関係性や新しい組み合わせを生み出し、つながりの輪を広げていきたいと考えています。当社の主力製品である内装品も、「人とクルマ」をつなぐもののひとつだと思います。こうした思いを込めたスローガンが「こころをつなぐものづくり」です。
今後はますます様々な文化や価値感、多様性を受容することや、個性を尊重することが望まれる世の中になっていくと思います。ですから、スローガンの「核」にあたる部分は皆さまと共有しながら、ここから派生する、より自由な解釈や活動にも期待しています。
そうすることで様々な「個」がつながり、今までにないものづくりができると信じています。
私たちは、人と人とのつながりを考え、お客様の思いを形にしてまいりました。そして、これからもより多くの人々に笑顔をもたらすような新しい価値を創造していきます。日々挑戦し、よりよい未来に向けて進化し続ける『佐々木コーティング』を、今後ともよろしくお願いいたします。
社長に就任し10年。改めて思う「自分なりの創業」と、佐々木コーティングのこれから--佐々木統一社長インタビュー
2代目だからこそできる「私なりの創業」
--2008年に社長に就任されたとのことですが、もともと先代の創業のきっかけはなんだったのでしょうか?
先代である父は、非常に穏やかな性格でしたが、型にはまるタイプではありませんでした。祖父は商社勤務だったんですが、当時としては視野が広かったんでしょうね、祖父の姿を見て、自分で何かをしたいと今の会社を創ったようです。結局、細かな創業の経緯を聴く機会はなかったのですが、私が物心ついた頃にはすでに町工場の社長として奮闘していました。
世代や時代の特色かもしれませんが、父は人との接点が多くて深くて……会社の規模が拡大しても、人との出会いやご縁を第一にする姿勢は変わらなかったと、幼心にも感じていましたね。
--先代の背中を見て育っていらっしゃったということは、現在の社長職に就いた時も、十分に心の準備ができていたのでしょうか?
実は、ほとんどできていませんでした。もちろん継ぐことを意識していましたが、大学卒業後は別の会社に就職していましたし、一緒に仕事をしてきた経験も接点も少なかったので、準備は十分とはいえませんでした。
さらに就任当時はリーマンショックの最中。まさに二重苦で前を向いて歩くことしかできず……一歩間違えたら会社はなかったかもしれません。しかし逆に、短期間でいろいろなことを経験させてもらい、今ではよかったと思っています。
--なるほど…そういう経緯だったんですね。そんな中でも先代から、これだけは守るように言われたことはあるのでしょうか?
前述のように父は寡黙な人間だったので、直接何かを言われたことはないのですが、働く姿や周りの方々との関係性を見てきて、
やはり人を大切にすること、そして正直であることは守っていきたいと思っていますね。
働く姿や周りの方々との関係性を見てきて、やはり人を大切にすること、そして正直であることは守っていきたいと思っていますね。
--それでは逆に、変えていきたいのはどんなところでしょうか?
国内の自動車部品業界は成熟しており、仕組み・構造も確立されているので、これまではやるべきことがイメージしやすかったのかもしれません。しかし昨今の大手自動車企業様の例を見ると、電気自動車の開発といった技術面をはじめ、事業そのものも舵取りが変わり、業界全体が変革期を迎えていると痛感しています。
製造業の立場から見ると、AIとの関わり方も大変重要ですが、論理や科学では出せない答えがあります。ですから、AIが発達していくからこそ、より人間的な知性や感性、アーティスティックな部分をものづくりにどう活かすかが、重要になっていくと思いますね。
これらは、創業当時にはなかったテーマです。
創業者というのは偉大な存在ですので、比較されるのは私の宿命ですが、常に求められることは変わっていきますので、その流れやお客様の声をしっかりと見て聞いて「私なりの創業」をしていけたらと思います。
技術力と提案力、そして社員の魅力が会社の要
--さて、佐々木コーティングさんでは、技術力はもちろん提案力が評価されていると伺っています。
希望に応じた製品を確実に納品するだけではなく、現場に出向いて一緒に課題や問題を発見して解決するそうですが、創業からそういったスタンスだったのでしょうか?
先ほども述べたように、先代は人との関係性を大切にしておりましたので、会社の文化としてはあったと思いますが、かたちになり始めたのはここ20年くらいでしょうか。というのも、業界の中では当社は後発ですので、勝負するものを自分たちで作らざるを得ない状況だったんですね。
「顧客志向」とはどの企業でもいわれていますが、実行できている企業さんは実際は少ないと思うんです。そんな中で私たちは、やらなければ存続できないことを肌で体感してきました。
そしてお客様のお話を何度も伺い、課題点を見つけることで結果的にたくさんの製品が生まれました。製品にこだわり続け、必死にお話を伺ってきたことが、今の提案力に結びついているのかもしれないですね。
--とはいえ、基本に技術力や聴く力、何より従業員さんのお人なりがあってこそですもんね。ではお客様からはどのような声が寄せられていますか?
人材に関してはよく褒めていただきます。お客様とコミュニケーションが取れる人材が多いということですね。
チーム編成による活動を基本としているので、営業系に限らず、技術畑の人間のコミュニケーション能力も高いんです。
ですから、今後も部門にこだわらず社外に出られる機会を増やし、私たちのいいところを伸ばしていければと思います。
--社長は、どんなタイプの社長を目指していらっしゃいますか?
従業員の皆さんの意見をうまく取り入れながら、組織全体を進むべき方向にリードしていきたいと思っています。最前列というよりは、後ろからどっしりと見守れたらいいですね。幸い皆さん優秀で、基本的には同じ方向を向いていますから、最後のボタンを私が押すというイメージでしょうか。
--社長に就任してからはピンチも迎えられたと思うのですが、どうやって切り抜けてこられたのでしょうか?
極限的な現場に身を置いてこそ、解決に繋がることを経験で学んだので、情報収集して取り組みつつも、最終的には火の中に向かっていきます。
というよりも、正確には腹を決めた瞬間にどこからか救いの手が差し伸べられていますね。「腹を決めれば物事は動く」といわれますが、まさにそのとおりで、窮地の時には自分と関わってくれた方々のありがたみを感じます。
--やはり真っ向から立ち向かうことが大事なんですね。数々の難関をくぐりぬけ現状に至っていると思いますが、印象に残る製品や出来事があれば教えてください。
どれと決めることはできませんが、直接立ち上げに関与した製品や苦労した製品には、やはり思い入れがあります。なかでも、内装部品に関してはあらゆる車種に採用されていますので、テレビCMなどでちょっと映っただけで「うちの製品たちが!」と、気持ちが上がります。
出来事に関しては、社長就任前に営業担当をしていた頃ですね。まだ駆け出しでしたので不具合があった際には、状況確認と併せてよく謝りに出かけました。先方様はもちろんご立腹で「全くけしからん!」とおっしゃるのですが、その後一緒に「だからこうするといい」とアドバイスをくださったり、「こんな情報を聞いたんだけど」と教えてくださったり……。とにかく勉強させてもらいました。
日本の自動車産業は世界トップレベルということもあり、業界全体がより高みを目指しています。だから横の連携がすごいんですよね。これは業界のいい文化だと思っています。
まずは「つくりたいもの」ありき。拡大は、夢を叶えるのにふさわしい規模で。
--さて、佐々木コーティングさんは諸外国へも進出されていますが、今後の世界への発信には、どんなビジョンを描いていらっしゃいますか?
2006年に、原材料メーカーさんとの合弁という形で中国に進出し、2013年には北米に商社さんとの合弁で事業をスタートさせました。企業の成長にはいろいろな形があり、規模の拡大はそのひとつですが、活動の場を国内市場のみに限定してしまうと成長が制約されてしまう。この10年、そう思いながら世界の動きを見てきましたので、諸外国への進出は必然だったと思います。
私自身好奇心が強いというのもありますが、事業でもほかでもいろいろな世界を見たいですから、従業員の皆さんにも同じ世界を見てもらいたい。
ですから今後も積極的に、いろいろな市場に発信していきたいですね。具体的にはメキシコやヨーロッパ。そしてアジア圏ではアジアに合ったアプローチを考えています。
--先ほど「会社の成長という意味では、規模の拡大はそのひとつ」とありましたが、今後どんどん規模を拡大していきたいということでしょうか?
海外には目を向けていますが、やはりうちの場合は大きさより中身ですから、拡大ありきではありません。
何を作り、お客様にどう喜んでもらうかという「質」が第一。ですから大きくなることでやりたいことがやれないなら、今のままがいいと思っています。
ただ、5人で考えるのと50人で考えるのでは、やはり後者の方が面白いものが作れます。そういう面で規模の拡大が必要と思えば、バランスを取りながら広げていきたいですね。
--社長さんは、仕事をしていく上で誰を幸せにしたいですか?
月並みですが、まずは日頃から身近にいる人。具体的には従業員の皆様やその家族、お取引先、そして自分の家族など、直接コミュニケーションを取る方々でしょうか。
私個人としては、従業員さんというのは仲間であり、家族であり、ビジネスパートナーであり、すべてを兼ね備えている大切な存在なんです。ですから従業員さんを幸せにすることで周りにもその思いが伝わり、幸福度が高まっていくと思うんですね。全体の幸福度を高めることを目指し、日々を積み重ねていけば、世間にとってよい企業となり、ひいては地域貢献や社会貢献に繋がるのではないでしょうか。
--では、大切な仲間である社員の皆さんに一言お願いします。
うちは大企業ではないですが、誇れるものもたくさんありますし、当社でしかできない経験もあると思います。ですから日々の活動の中で成長の機会と自分の居場所を見つけて欲しいですね。
お客様からは遠回しに「自由すぎるのではないか…」と言われることも、正直ありますが(苦笑)、それがうちのスタイル。私もできる限り、のびのびと思ったことができる環境を整えていきたいと思います。仕事は人生の一部ですが、1日で費やす時間は長いので、一人ひとりがやり甲斐を見出しながら、大いに楽しんで欲しいですね。
--最後に、今後の夢や目標をお聞かせください。
何に喜びを感じるかは人それぞれですが、多くの皆さんが「この会社に入ってよかった」と思えるような喜びと魅力の詰まった会社を、皆さんと一緒に作り上げていきたいと思っています。
個人的には、よりシンプルに生きることでしょうか。私の趣味は音楽鑑賞なんですが、若い頃にそこまでレコードが買えなかった分、反動なのか現状何千枚ものCDを所有しているんです。
でも、所有して満足することに疑問が沸いてきまして……目に見えるもので縛られたり行動すると、発想は自由にならないですよね。
ビジネスに置き換えるとよくわかるので、やはりシンプルなのが一番なのではないかと。これは今後の目標というか、生き方そのものの課題だと思っています。